早いもので、もうこんなに経ちます
毎年、この日になると思い出すことがいっぱいで
「とりあえずもどろう」
そう言って乗った朝一番の船
前日の晩、不在だった親の代わりに取ってしまった電話
そこから聞こえた叔母の声
そのとき、私はそれがどういうことなのか、全然分かってなくて
「明日、戻ることになりそうだ」と
それだけ、おもったんです
途中、
「たぶん大丈夫だから」
という連絡にも
「ここまで来たから会いに行く」
と言った父
その判断は、正しかった
「おなかすいたでしょ」
誰だったかが、そう言って持って来てくれたドーナツの箱
何の偶然か、同じ店のドーナツが今目の前にあります
まだ小さかった妹とそれを食べて、遊んでいたその時
その部屋からみんな出てきた
ああ、もう大丈夫なんだ
そう思ったのに
父の口から出た言葉は、なかなか理解しがたいものでした
私がそれを理解できたのは、翌日になってから
それは、まだ漠然としていたけれど
「にぎやかにおくってやろう」
そう言ったのは誰だったか
だから私も泣かなかった
大人達もお酒を飲んで、まるで宴会の席みたいにさわいでたのを覚えています
ハッキリ言って、私にはあなたと過ごした記憶なんてほとんどありません
覚えてるのは、何を言っているのかサッパリ分からない電話だったり、ウチに遊びに来たことくらい
なのに、
あなたはこんなにも、私の中に「なにか」をのこしていった
たったそれだけ
それだけなんだけど
ああ、すごい人だったんだ
そうおもいます
そして多分来年も
こうして思い出すんです
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